
知の探研
2025年度から新しい学士課程教育がスタート
学⼠課程教育の再編成
2025年度より、本学では学習者中心(Learner-centered)の教育への転換を柱として学⼠課程教育を再編しました。知識の修得を主目的とする教育から、学生が自ら問いを立て、他者と協働し、経験を振り返りながら理解を深める教育へと移行しました。社会課題が複雑化し、専門分野を越えた協働が求められる現代において、学生一人ひとりが「学び方を学ぶ(Learn how to learn)」ことを可能にする教育体系を学⼠課程教育全体で構築しています。
新しい課程教育における『知の探研』の位置づけ
『知の探研』は、全学必修の初年次科目として配置される探究型の科目です。同時に、新しい学⼠課程教育の理念を象徴的に体現する科目でもあります。多様な他学部学生との協働を通じて、問いを立て、対話し、省察するという学びのあり方を体験します。本科目は、協働と省察を軸とする学習観を共有する場として、学⼠課程教育全体の設計思想を具体化する位置づけにあります。
『知の探研』という科目名には、大学入学以前に行なってきた「探」究活動と大学で取り組む「研」究とを繋ぐという意味を込めています。学生が本学での学問的活動を主体的に進める「探研家」となることを期待しています。
『知の探研』の教育目的
本科目は、異なる背景や関心を持つ他者と協働しながら課題に取り組み、議論を通じて自らの考えを整理し、省察する力を育むことを目的とします。対話と試行を重ねる過程で、他者の意見を受け止め、論理的に自らの主張を形成する姿勢を養います。結果のみならず協働の過程を重視し、責任ある参加を通じて学びを深めます。
『知の探研』の到達目標
到達目標として、
- チームのメンバーとしての責任感や貢献について自身のことばで表現できる
- 自身の行動やチームとしての活動を省察し、以後に活かすことができる
- 自らの主張とチームの方針をマネジメントし、論理的にまとめて発表・説明することができる
- 異なる意見に耳を傾け、自身の考えとの差異を認め、より良いアイデアへ繋げることができるを掲げています。
これらは、本学ディグリーポリシーが示す「実践力」「コミュニケーション力」「教養力」と特に密接に関わる能力であり、カリキュラムマップにおいて体系的に位置づけられています。本科目は、これら汎用的能力の形成を担います。

『知の探研』の授業実施構造
オンライン授業を経て教室授業へ
『知の探研』では、教室で行うチームでの活動に備え、第1学期にオンデマンド型のオンライン授業を行います。これは、大学での探究に臨むものとして、理解しておくべきグランドルール(知の探研7か条)を学ぶための自己学修です。具体的には、大学で学ぶ方法と意味の理解、先行研究に触れる方法、レポートの書き方の基本、研究倫理、図書館の活用方法、チームビルディング、多様性や包摂など、探究・研究を進めるにあたり基礎となる共通理解を形成します。
第2学期以降に開始する教室授業では、学部が混在するクラス、チームにおいて、課題設定、調査・分析、発表・報告、振り返りなど一連の学問的プロセスが展開されます。 これらオンライン授業、教室授業を合わせて3単位科目です。


授業全体のグランドルール
「知の探研7か条」
探究系科目に適したグランドルールをまとめたものであり、各条には意味を解説する文章を添えています。
第1学期オンライン授業の章立て
例)関心を寄せる:図書や論文の検索・入手方法や、自身の学び方を振り返る基礎的な学習理論の知識などを配置
参考
- ・Chickering, A. and Gamson, Z. (1987) Seven Principles for Good Practice in Undergraduate Education
- ・名古屋大学高等教育研究センター 「ティップス先生からの7つの提案」
- ・東京工業大学 「学びの7か条」
グランドルール
「知の探研7か条」


第2・第3学期から学部混合で24クラスに分かれて受講
第2または第3学期には、学部を越えて編成された24クラスに分かれて対面授業が実施されます。岡山大学の新入生2,400名を100名ごとに24クラスに分け、このクラスを教員がペアで受け持ちます。さらに大クラスを 2 つの小クラスに分割した50名の単位で実際の活動は行われ、教員の提示したテーマ(教員テーマ)のもとチームで活動していきます。教員テーマは学期中の前後半で切り替わるため、一人の学生は専門分野の異なる教員が提示した2つのテーマに取り組むことができます。


さらに大クラスを 2 つの小クラスに分割した 50名の単位で実際の活動は行われ、教員の提示したテーマ(教員テーマ)のもとチームで活動していきます。教員テーマは学期中の前後半で切り替わるため、一人の学生は専門分野の異なる教員が提示した2つのテーマに取り組むことができます。
1クラスの授業の流れ
各小クラスで学生は、教員テーマのもとグループで議論・調査・発表、振り返りを行います。複数回の対話と考察を経てテーマをまとめ、成果を共有し、それに至るプロセスを振り返ります。教員は知識提供者というよりも、問いの深化と協働の調整を支える役割を担います。
1クラスの授業の流れ(教員A、教員Bが担当)
学生の半数50人のグループ
| 第1週 | 第2週 | 第3週 | 第4週 | 第5週 | 第6週 | 第7週 | 第8週 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 5・6限 | 合同 | 教員A | 教員A | 教員A | 教員B | 教員B | 教員B | 予備 |
| 7・8限 | 教員A | 教員A | 教員A | 教員B | 教員B | 教員B | 合同 | 予備 |
| 授業外 |
学生の半数50人のグループ
| 第1週 | 第2週 | 第3週 | 第4週 | 第5週 | 第6週 | 第7週 | 第8週 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 5・6限 | 合同 | 教員B | 教員B | 教員B | 教員A | 教員A | 教員A | 予備 |
| 7・8限 | 教員B | 教員B | 教員B | 教員A | 教員A | 教員A | 合同 | 予備 |
| 授業外 |
教員A、教員Bそれぞれのテーマで授業12時間と授業外の学修時間
クラス編成の方針と方法
クラス編成は学部が混在する形で行います。岡山大学の各学部の人数比を保ったまま、かつ希望も取り入れる形で、100名のクラスを編成していきます。
担当教員の組み合わせ例
- ・哲学+社会福祉学
- ・教育学+農学
- ・教育学+理学
- ・法学+工学
- ・経済学+理学
- ・理学+教育学
- ・医学+教育学
- ・歯学+経営学
- ・薬学+経営学
- ・工学+文学
- ・工学+国際文化
協働・学部混合・プロセス重視の授業設計
協働
本科目では、6人程度の小グループによる活動を基本単位としています。学生はチームの一員として課題に取り組みます。活動の過程では、役割分担や意見の衝突、合意形成など、チームで学ぶことの難しさにも直面します。こうした経験を通して、互いの力を引き出しながら協働して成果を生み出す過程そのものを学びの対象としています。
学部混合
異なる専門や関心を持つ学生が同一のテーマに取り組むことで、多角的な視点が交差する学習環境を実現します。総合大学の人的資源を活かし、将来的な越境的協働の基盤を制度的に育む構造としています。多様性そのものを学習資源と捉え、異質な視点が交わる教室環境を意図的に設計しています。
プロセスを意識した授業設計
本科目では学問的プロセスを授業構造に組み込むことを必須としています。成績評価においても、学びのプロセスを記録として残し、これを評価することを推奨しています。特に省察については、短時間ワーク後、授業終盤、教員テーマ終了時、科目全体の終了時など、複数段階で機会を設けるようにします。その方法は、個人記述、ペア共有、グループ討議など多様で、具体的手法は各教員の裁量に委ねられますが、学びの循環を回す構造は共通しています。経験を言語化し次の学びへとつなげる設計です。


授業実施状況の把握と教育改善
本科⽬では、授業の実施状況や学⽣の学びの様⼦を把握し、教育改善につなげる取組を⾏っています。2025年度は⾼校新課程で学んだ学⽣が⼊学する初年度であることから、新⼊⽣を対象に、⾼校での学習経験(特に探究活動)および⼤学での学びに関する意識を把握するアンケートを実施しました。これは新しい学⼠課程教育全体の検証を⽬的とするものであり、⼤学での学びに関する意識調査はパネル型調査として継続的に実施する予定です。また、「知の探研」については、学⽣および授業担当教員を対象としたアンケートや、上席副学⻑との懇談会などを通じて、授業での経験や学びの実感、授業運営に関する意⾒を収集しています。これらの結果をもとに授業の設計や運営を⾒直し、翌年度以降の教育改善へと反映しています。
新入生の学習経験をアンケート調査
Q.探究の時間などで、あなたはどのようなアウトプット活動を経験しましたか。


